建物が登録有形文化財に指定されているお宿です。外観の写真にひかれて予約しました。古い建物が好きなんです。
大正期から昭和の初期にかけて建築、改築されたそうです。
斜面を使った池のある中庭を囲むように建物が配置されています。
宿泊日は、中秋の名月の日。廊下には、お月見の室礼が
お部屋の凝った意匠の数々
お部屋は、ききょうの間。階段を二階分ほど登った中庭を望むお部屋です。
柱には、ききょうの彫刻がありました。これは、節袴(ふしばかま)といって、木目の節を隠すための飾りだそう。糊で貼り付けたわけではなく、埋め込んでいます。
この障子の影も素敵。障子越しの柔らかな明かりって好きなんです。
障子を開けると影を作っている木と竹のかざりが
障子の上にも明かりとりの小さな障子が。以前住んでいた家にも同じ形式の障子がありました。懐かしい。そして美しい。
窓辺の手すりも凝っています。
欄干には、ききょうの彫り込み
お部屋によって部屋そのものの造りも意匠も違うらしいです。他のお部屋も見て回りたい
源泉掛け流しのお風呂が三箇所も
会津藩の武士もこの温泉に入っていたそうです。感慨深い。
館内の三箇所あるお風呂のうち、一番玄関に近いお風呂「きつね湯」が一番熱くて、玄関から離れるに従って温度が下がります。といっても、源泉が58度ですからね、冷ましていても44 度くらいあるそうです。熱い!
熱いお風呂に入ると思い出すのは、沸かしすぎたお風呂に入った時のこと。今のお風呂は、設定温度になると自動で止まってくれるけど、昔は時間をみて自分で止めないといけなかったから、つい忘れて沸かしすぎてしまうことがありました。
三箇所のお風呂のうち真ん中には、貸切家族風呂が3つあります。「瓢の湯」「蔦の湯」「鈴の湯」と、それぞれ名前がついています。予約不要で無料なのが嬉しい。それぞれ楽しめちゃう。
一番奥が 「さるの湯」42度〜43度で、ぬるめとあったのですが、それでも私にはちょっと熱め。一番広くてシャワー もあります。ここだけは、大きな窓があって外の樹木をながめながら入ることができます。他のお風呂には、シャワーなし。
全ての温泉は、透明なお湯で匂いもなく、さっぱりとした気持ちの良いお湯でした。
無色透明で無臭のお湯ですが、湯口には、びっしりと湯の花がついていて温泉成分はしっかり含まれているのがわかります。
売店では、地元のコーヒー牛乳があります。やっぱりお風呂後はコーヒー牛乳!
お食事は会津の郷土料理
夕食、朝食とも部屋食の昔ながらの旅館スタイルです。お布団も番頭さんが敷きにきてくれます。
地の物をいただけるのは嬉しいです。旅行では、ここだけの体験をしたいのです。山の中なのに、海の魚の刺し盛りなんかでできたら何か違うと思ってしまいます。
会席料理スタイルでたくさん提供されたのですが、その中から3品ご紹介
鯉の甘煮
会津藩伝統の武家料理。甘辛いしっかりとした味付けです。量もたっぷりあって、これだけでお腹いっぱいになります。残したら持ち帰り用に包んでくれるそうです。臭みは全くありません。海のない会津では川魚が貴重なタンパク源。魚料理のなかで一番位の高い料理だったそうです。
ニシンの山椒漬け
北前船で運ばれてきていた北海道産の身欠きニシンを使った保存食。お酢の酸味と山椒の風味がちょうど良く美味です
こづゆ
会津の郷土料理の代表格。お麩のほか、細かく刻んだお野菜が沢山入ったお煮物です。
お月さんも見ることができました。
部屋にあった説明書には、「ご希望のお客様には、館内をご案内します」とありました。しまった、早く気づいていれば案内してもらったのに。帰り際に気づいてしまった。
階段の上り下りでの移動が多い日本旅館です。足腰がしっかりしているうちに泊まらないといけません。
古い建物を維持管理していくのは、大変です。旅館として営業しつつ、この建物を守ってくださっていることに感謝します。